３５８号 雑記 メンバーの齋藤純二さんに任せきりで、私は参加してないんですが、ツイッター（現・Ｘ）もやっております。
●MY DEAR公式ツイッター 「MY DEAR 詩の仲間たち」（担当：齋藤純二）
「MY DEAR 詩の仲間たち」
https://twitter.com/mydear2000s
（リンクが飛ばない場合は、これをコピペして下さい）
●戦後八十年
戦後八十年。ご高齢になるまで、ずっと口を閉ざしてきたこと。戦地で起こった本当の惨状を、ようやく語ってくれた方々の想いに、あらためて耳を傾け、心に刻みつけておきたい。
決して忘れてはならないもの。下記サイトの記録は、日本人の財産と言っていい。ここに、リンクを残しておきたい。
●「戦争証言アーカイブス」●
https://www.nhk.or.jp/archives/sensou/
（リンクが飛ばない場合は、これをコピペして下さい）
★★『 ネットの中の詩人たち ７ 』 好評発売中★★
『 ネットの中の詩人たち ７ 』 編著：島 秀生
定価（本体１,４００円＋税） 土曜美術社出版販売
ISBN 978-4-8120-1850-7 C0092
★ 全国の書店、ネットショップから、お取寄せできます。
●三浦志郎さん 既刊詩集。
『海からの言葉』三浦志郎：著 （文芸社）
2017年10月刊
ISBN978-4-286-18737-2 C0093
定価（本体600円＋税）
●Kazu.さん 既刊詩集
坂井一則 詩集
『世界で一番不味いスープ』（コールサック社）
2018年 3月刊
ISBN978-4-86435-332-8 C1092
定価（本体1,500円＋税）
●くれさん 既刊詩集 初版完売 重版おめでとう！！
木村孝夫 詩集
『私は考える人でありたい』 （しろねこ社：＜しろねこ旅の本シリーズ＞）
2018年 8月刊 ７５６円
＊１４０文字のツイッターに書いた短い作品６６作を収録。
●くれさん 既刊詩集
木村孝夫 詩集
『 六号線 』 （（しろねこ社：＜しろねこ旅の本シリーズ＞）
―― １４０文字と＋＆の世界 ――
７００円＋税
●Kazu.さん 既刊詩集
坂井一則 詩集
『 ウロボロスの夢 』（コールサック社）
2019年 11月刊
ISBN978-4-86435-416-5 C1092
定価（本体1,800円＋税）
●くれさん、こと、木村孝夫さんが
白鳥省吾賞で優秀賞を受賞されました！！
●くれさんが新詩集を出版！！
木村 孝夫 詩集
『 福島の涙 』（モノクローム・プロジェクト）
2020年6月1日刊
ISBN978-4-88330-020-4 C0092
定価（本体1,200円＋税） 販売：らんか社
●くれさん、こと、木村孝夫さんが受賞！！
「第35回国民文化祭・みやざき2020 ＆ 第20回全国障害者芸術・文化祭みやざき大会」の、
文芸ジャンル、「詩の祭典」への応募において、
木村孝夫さんの作品「原発大地」が、
「第３５回国民文化祭宮崎県実行委員会、第２０回全国障害者芸術・文化祭実行委員会会長賞」
を、受賞されました。
●三浦志郎さんが新詩集を出版！！
三浦志郎 詩集
『 時の使者 』（文化企画 アオサギ）
2020年 12月刊
ISBN978-4-909980-16-8 C0092
定価（本体1,500円＋税）
＊ amazonから注文できます。
●藍音ななをさんが新詩集を出版！！
藍音ななを 詩集
『 おいしいは愛しい 』（純和屋）
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
●雨 音さんが新詩集を出版！！
雨 音 詩集
『 ドロップス 』（純和屋）
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
＊なお、本詩集と、日頃の雨音さんの女性の生き方像が評価され、
★☆★ 祝 祝 ★☆★
雨 音さんが、第二回宮尾節子賞 を受賞されました！！
●青島江里さんが新詩集を出版！！
青島江里 詩集
『 無数の橋 ─ きみへのエール 』 （純和屋）
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
●木村孝夫さん（くれさん）さんが新詩集を出版！！
震災から９年間の名詩ピックアップと、
震災10年目の新作からなる、木村孝夫さん集大成の詩集です。
木村孝夫 詩集
『 言 霊 』 （純和屋）
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
●Kazu.さんが新詩集を出版！！
坂井一則 詩集
『 夢の途中 』（コールサック社）
2021年 11月刊
ISBN978-4-86435-501-8 C0092
定価（本体1,800円＋税）
＊全国の書店（取り寄せ）や、ネットショップで注文できます
●富士伊真夜さんが新詩集を出版！！
富士伊真夜 詩集
『 長い旅 』 （純和屋）
むしろ心を病みそうになってる人こそ、読んでほしい
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
●くれさんが新詩集を出版！！ ３月11日の震災11年目の日に。
木村 孝夫 詩集
『 十年鍋 』（モノクローム・プロジェクト）
2022年3月11日刊
ISBN978-4-88330-027-3 C0092
定価 1,320円（本体1,200円＋税） 販売：らんか社
＊全国の書店（取り寄せ）や、ネットショップで注文できます
● 綴木 黎さんが新詩集を出版！！
綴木 黎 詩集
『 自転車に乗って 』 （純和屋） ￥800
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
● 澤 一織さんが新詩集を出版！！
澤 一織 詩集
『 春が来て ─ 妊活生活の夫 ─ 』 （純和屋） ￥1000
澤 一織 詩集
『 ヒーローなんていなくてもいい 』 （純和屋） ￥1000
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
● かすみじゅんさんさんが電子書籍の新詩集を出版！！
かすみじゅん 詩集 Kindle電子書籍 シリーズ第２巻
『 追想の彼方 vol.2 』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BVL8MHV2
★☆★ 祝 祝 ★☆★
滝本政博さんが
第３回 秋吉久美子賞 を受賞されました！！
● 夏 生さんが新詩集を出版！！
夏 生 詩集
『 現 在 地 』 （純和屋） ￥1000
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
● 井嶋りゅう さんが新詩集を出版！！
井嶋りゅう 詩集
『 影 』 （文化企画 アオサギ）
2023年6月18日刊
ISBN978-4-909980-42-7 C0092
定価 2,200円（本体2,000円＋税）
＊Ａｍａｚｏｎ から注文できます
●Kazu.さんが新詩集を出版！！
坂井一則 詩集
『 あなめあなめ 』（コールサック社）
2023年 10月刊
ISBN978-4-86435-587-2 C0092
定価（本体2,000円＋税）
＊全国の書店（取り寄せ）や、ネットショップで注文できます
● 滝本政博さんが新詩集を出版！！
滝本政博 詩集
『 エンプティチェア 』（土曜美術社出版販売）
2023年 11月刊
ISBN978-4-8120-2814-8 C0092
定価（本体2,000円＋税）
＊全国の書店（取り寄せ）や、ネットショップで注文できます
● 山雀 ぐりさんが新詩集を出版！！
山雀 ぐり 詩集
『 ミーファとキューブ 』 （純和屋） ￥800
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
● かすみじゅんさんさんが電子書籍の新詩集を出版！！
かすみじゅん 詩集 Kindle電子書籍 シリーズ第３巻
『 追想の彼方 vol.3 』
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CSX8JNST
● 三浦志郎 さんが新詩集を出版！！
三浦志郎 詩集
『 地下に在り 』 （純和屋） ￥1000
＊メルカリの「純和屋」もしくは齋藤純二さんにメールして購入して下さい。
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
井嶋りゅうさんが、詩集『影』で、
第34回 日本詩人クラブ新人賞
第37回 福田正夫賞
を、同時受賞されました！！！
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
坂井一則さんが、詩集『あなめあなめ』で、
第64回 中日詩賞奨励賞（後援：中日新聞社）
を、受賞されました！！！
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
富士伊真夜さんが、
『第40回四日市文芸賞』の、一般の部「小説・評論・ドラマ」部門で
「第40回記念審査員特別賞」を
また、『第22回四日市短詩型文学祭』の一般・現代詩部門で
「ＣＴＹ賞」を
を、同時受賞されました！！！
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
妻咲邦香さんが
「旅」をテーマの文芸＆情報誌「たびぽえ」主催の
第２回たびぽえ大賞
を受賞されました！！！
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
荻座利守さんが
第4回川越文芸賞 準賞（詩の部）
を受賞されました！！！
★☆★ 祝 祝 ★☆★
＊ 快挙！！
くれさん、こと、木村孝夫さんが
第53回壺井繁治賞
を受賞されました！！！
● 滝本政博 さんが新詩集を出版！！
滝本政博 詩集
『 四百万回の殴打 』 （デザインエッグ株式会社） ￥1300
＊Ａｍａｚｏｎ から注文できます
● 編集雑記
◆能登半島地震から２年。
── 大地震の時は水が出ない。関係者が考えおいてほしいこと２点。
ヒーローになりたい 島 秀生
お正月だったから
曽祖母の家の石油ストーブで
お餅を焼いていた
そしたら震度７の能登半島地震がきて
ストーブに乗せていたやかんが落ちた
あの子が座ってたお尻や足を全部やけどしたんだ
あわててズボンを脱がせたけど
皮膚も一緒にずるりとむけて
皮膚のちぎれたのを持って
痛いよう ママこれなあにって聞くんだ
水で冷やそうと思ったけど断水で水が出なかった
救急車を呼んだけど 一一九番通報で溢れるさなか
やけどじゃ行けないと言われ
自分で車を出して亀裂の入った道路を行こうとしたけど
お尻をやけどしてるから痛い痛いと座っててくれなくて
家に引き返し すがるようにもう一度救急車呼んだら
来てくれることになったのだけど
今度は津波が来るから高台に逃げろと放送がきて
もうどうしたらいいかわからなくなった
逃げずに家で待っていると やっと救急車が来て
隣町の病院に運ばれたけど
軽傷ではないけど重症でもないといわれ
塗るだけの治療でおしまい
その日は家も被害を受けて帰れないから
病院のロビーで寝て
そのあいだも痛い痛いと言っていた
それから無事な親戚の家に戻ったけど
二日後になって41度の熱が出て
また病院に行ったら
熱がある人は部屋に入れないと言われ
救急の扉の前で待っていたら
顔色が変わって青白くなっていって
息をしてないとわかった
やっと扉があいて集中治療室に運ばれたけど
翌日死亡が確定した
なんで最初に入院させてくれなかったのだろう
危険な状態だったのに
あんなに痛い痛いって言っていたのに
なんでやかんの熱湯があの子じゃなくて
全部私にかからなかったのだろう
そしたらあの子は生きていたのに
ママのつくったごはんおいしい
ママ世界一かわいいって言ってくれるやさしい子だった
大きくなったら消防士や警察
人を守るヒーローになりたいって言っていたのに
能登半島地震から２年。
能登半島地震では、たくさんの人が亡くなり、かわいそうな話をいっぱい聞くこととなりました。
中でも、私が一番、心を痛めたのが、このお話でした。
この話は実話です。正確にいうと、亡くなった子のお母さんが、あちらこちらの新聞に、断片的にポツポツと語られていたことを、可能なかぎりかき集め、また当時のその地の状況ともつきあわせて、きっとこういうことであったにちがいないという確信が持てたので、一本のストーリーに仕上げたものです。こういうお話しで間違いないと思います。
＊医療関係者の方にお願い。
あの大地震のあとですから、病院がケガ人でごった返していたのもわかるので、一概に責められないことではあるのですが、結果から言うと、これは誤診でしょう。言いたいのは、大地震ならでは生じる誤診がある、ということです。
大地震の時は、必ず水道管が破損し、断水します。
ふつう、やけどを負ったら、まず水で冷やすぐらいのことは家庭でもやるわけですが、この子の場合は、断水だったために、一次処置としての「水で冷やす」という行為ができていないのです。やけどが起きた時のままなのです。水で冷やせていないから、やけどが深化したのです。このことを医師がわかっていないから、誤診が起きたのです。
これは教訓です。大地震の場合、必ず断水が起こり、やけどを水で冷やせていないということが起こるから、やけどがもうワンランク重症化してしまうのです。このことを忘れないでほしい。たかがやけどと思わないで欲しい。
子供に100度のお湯がかかり、お尻と足を全部やけどした。これで死に至ったという事例です。
私がこの出来事を詩にして残そうと思ったのは、このお母さんの想いを、たとえいくばくかでも代弁したかったからなんだろうと思っています。
＊消防関係者の方にお願い。
大地震の時は水道管が破損して水が出ない。阪神淡路大震災における長田での火災を教訓に、輪島朝市通りでも対策は講じられていたはずだった。しかしながら、その代替となる水源は、うまく機能しなかった。さらには津波警報のさなかに、どこまで消火活動を続けるのかの問題も起きた。
阪神淡路大震災における長田火災の教訓に加え、能登半島地震における輪島朝市通り火災の教訓も追加されたと言えます。
とりわけ各地の木造家屋密集地において地震火災が発生した場合にどうするかを、消防関係者の方には、準備・点検しておいて欲しいと思います。
■ 輪島 朝市通り火災は1か所から拡大した 重なった想定外と誤算
石川県輪島市の観光名所「朝市通り」では、能登半島地震で発生した火災で200棟以上が焼け、およそ5万平方メートルが焼失した。
1か所から出た火の手は瞬く間に広がり、多くの住民が犠牲になった。なぜ火災は拡大し、住民たちの命を救うことはできなかったのか。
火災について取材を進めると、消火活動を阻むいくつもの想定外と誤算が重なっていたことがわかった。
○ 迫る炎「悪いけども逃げるよ」
帰省中だった清水宏紀さん（46）の実家は朝市通りのすぐそばにあった。
ゆったりとした元日を、父の博章さん（73）と、母のきくゑさん（75）の3人で過ごしていた。
ケーキを食べながら、2日前に誕生日を迎えたきくゑさんを祝っていた。
午後4時すぎ、輪島市で震度4と震度7の地震が相次いで発生。
1回目の揺れのあと、清水さんは 「津波がくるかもしれない」 と思い、駐車場に止めてある車のもとへ向かった。
そのとき、2回目の大きな揺れが発生し、実家の1階部分が完全につぶれて倒壊した。
「両親はどこにいる？」
清水さんは変わり果てた実家に向かって問いかけた。
すると母親から 「無事だよ」 と返事があった。
しかし、母親の姿は見えない。
つぶれた1階部分に取り残されていたのだ。
助け出したいが、姿の見えない母親を自力で助け出すことは不可能な状況だった。
近くで発生した火災の炎が迫ってきた。
両親を助け出すためにその場に残るか、逃げるか。
葛藤の末、清水さんは母親にこう告げる。
「悪いけども逃げるよ」
母親からは 「わかったよ」 と、返事があったという。
これが母親との最後のやりとりだった。
両親の行方はわかっておらず、実家があった場所からは人の骨が見つかり、警察のDNA鑑定が進められている。
清水宏紀さん
「今はまだ現実を受け止められません。現場を見てもあぜんとしている。ただ、早く両親を弔ってあげたいので身元がわかってほしいです」
○ 1か所から次々と延焼 大規模火災に
この朝市通りの火災では、200棟以上の住宅や店舗が焼け、およそ5万平方メートルが焼失した。
なぜここまで被害が拡大したのか。
地震発生から1時間余りたった午後5時23分。
救助活動に向かった消防隊が火が出ているのを発見し、ちょうど同じころ、輪島市の消防団で団長を務める川端卓さんも火災に気付いた。
消防団長 川端卓さん
「外を見回っていたとき、なんとなく空のほうに火の気を感じた。それで慌てて朝市通りに近づいたら建物2棟から火が上がっていた」
消防が火災を発見したとき、燃えていたのは、朝市通りの南側にある、隣接する2棟の建物の1か所だった。
すぐに消火活動を始めようとしたが、うまく進められない。
火はここから次々と延焼していった。
○ 断水で消火栓使えず 川の水も…
最初に到着した消防署員は、消防車を火元の南側に止め、ホースを伸ばして放水しようとした。
水道管が壊れて断水が起きて、消火栓は使えなかったため、近くを流れる河原田川の水を使うことにした。（地図１の場所）
ところが、地震による地盤の隆起が影響したのか、川にはほとんど水が流れておらず、消火に十分な水をくみ上げることはできなかった。
○ 防火水槽に近づけず 複数の放水できず
延焼をくい止めるには、火元を複数の所から囲うようにして放水するのが有効だとされている。
このため、先に駆けつけた消防署員を支援すべく、団長の川端さんは、火元の東側からの放水を試みた。（地図２の場所）
ここでも消火栓は断水していたため、地下に水を貯めた防火水槽を使おうとした。
しかし、道路を塞ぐがれきが行く手を阻み近づくことができない。
断水でも使えるはずの防火水槽が使えないのは誤算だった。
川端さんは、場所を火元の西側に移動し、川の水を使おうとしたが、やはり川の水はほとんど流れておらず、消火活動をすることはできなかった。（地図３の場所）
結局、初期に放水できたのは、最初に駆けつけた消防車の1台だけで、それもわずかな川の水しか使えず十分ではなかった。
○ 火の勢いは拡大 放水が追いつかず
初期消火の機会を逃すと、火の勢いは増していく。
輪島市では地震発生直後に1メートル20センチ以上の津波が観測されている。
地震発生後から大津波警報や津波警報が出されていたため、海に行って海水を供給することはできなかった。
朝市通りには、古くからの木造の建物が多く、倒壊した建物や家財はより燃えやすくなっていた。
火は道路を覆うがれきを伝いながら、火の粉も風に舞って燃え広がっていった。
川端さんは 「このままでは街が大変なことになる」 と感じた。
その後、続々と入った消防は、ホースを何十本もつないで、離れた場所にある防火水槽や小学校のプールの水を使って放水した。
しかし、火はすでに街全体を飲み込むように広がっていて、水の力は及ばなかった。
消防団長 川端卓さん
「消しようがなかったんです。もうこれはダメだなと思いました。火の粉が頭の上を越えて向かい側の建物の屋根のほうに飛んでいくのがずっと見えていました。力不足でした」
○ 海水を使って消火活動
津波警報が注意報に切り替わった翌2日の未明。
消防は海水をくみ上げて消火を始めた。
海から大量に供給された水で、ようやく火の勢いを食い止めることができた。
そして午前7時半、朝市通りの火災は鎮圧したが、辺り一帯の建物は焼け落ち、かつての賑やかな町並みはなくなっていた。
○ 専門家「防火水槽 使えなかったことを教訓に」
今回の火災を専門家はどう受け止めているのか。
消防行政に詳しい東京理科大学の小林恭一教授はこう話す。
東京理科大学 小林恭一教授
「阪神・淡路大震災では、消火栓が断水で使用できず火災が広がった教訓から、断水が起きても利用できる防火水槽の整備が進められた。しかし今回、その防火水槽が使用できなかったことを教訓にしなければならない。防火水槽の取水口を離れた場所にも複数設けて、1か所に障害物があっても他の所を使える対策をとるべきだ。
木造家屋密集地が全国各地にあって、地震で火災が起きると、消防隊が活動できない場合があるので、木造家屋の不燃率を上げていくことも継続的にやっていかなければならない」
さらに、大津波警報や津波警報が出されていた中、浸水想定区域で消火活動を強いられたことについて、小林教授は 「今回は津波が火災現場に到達しなかったが、津波が来ていれば多くの殉職者が出たおそれもある」 として、国が消火活動の安全に対する明確な基準や制度を示すべきだと指摘している。
さまざまな想定外が重なり、被害が広がった輪島市の朝市通りでの火災。
想定外を減らし、被害を拡大させないための取り組みを進めなければならない。
───── 以上、 NHK ONE ニュース 2024.2.1より
◆クマの凶暴化は、今の定説で、本当に説明がつくのか。（再録）
クマ被害について、私が最初に警鐘を鳴らしたのは、このコーナーにおいて2018年２月のことである。秋田・岩手両県において、明らかな異常が、私なりに確認できたからである。その当時は、クマの頭数は増えていない、という見解が多数であったが、この異常値は、増えているとしか考えられないという反論を述べたものであり、クマは肉食はしないという通説に対し、クマはもともと雑食であるし、肉食の事例が複数あるので、人にとって危険であり、危険は新たなステージに入ってきつつあるので、至急に対策が必要だということを述べた。
その予測と警鐘が誤りではなかったことが、不幸にも的中してることが、今なら多くの人に理解してもらえるのではないだろうか。
で、今、さらに気になっていることがあるので、以下に述べる。
★熊の凶暴化は、今の定説で、本当に説明がつくのか？
親子グマの場合に、母グマが、子グマを守るべく、周囲に来たものに攻撃的になる、というのはわかる。
また、クマから見て、エサと見なされるものの近くにおいて、エサ争い的に、近くに来た人間を襲うというのも、わかる。
また、出会い頭にビックリして、ビックリすると、とりあえず相手を攻撃する、というのもわかる。
しかし、そのどれにも当てはまらない場合にも、クマが攻撃的になっているのは、どう説明するのか？ と思う。
例えば、視界の開けた田畑で、黙々と農作業をやっている人に対して、後ろから襲う。エサとなるものの近くでもないのに、道を散歩中の歩行者を、追いかけてきてまで襲う。家への侵入もそうだ。クマの鼻なら、その家に人間がいることもわかっているだろうに、まるで無視するように入ってくる。森の中で喩えるなら、敵がいる巣穴に自ら侵入してきている行為で、敵がいても倒すつもりで最初から入ってきているのだ。
そもそも「クマ鈴」理論によれば、人の存在を知らせたら、警戒してクマの方が逃げるのではなかったか。明らかに、クマの方から人間に近づいてきて攻撃してるのは、どう説明するのか。
今年のように、過去に類を見ない、クマの出没と人間への攻撃回数を、はたして「ブナの実が大凶作だったから」だけで説明できるものだろうか？
私は、主因はそこにあるとしても、説明要素としては、まったく足りていない気がしている。そもそも人間の居住エリアのエサを狙うとしても、「クマ鈴」理論であれば、人間を避けながら、隠れながら、現われるはずではなかったのか。
「アーバンベア」という、ひとことでかたづけるが、「アーバンベア」というのは、子グマの折りに、母グマに連れられて、居住エリアに出現した経験を持つクマや、そもそも人里にごく近接したエリアに住んでいるクマのことを言うのだ。
だが今の出現の多さは、明らかにずっと山奥に住んでいたクマまで、街なかに出現してるということだし、そうした人間に慣れてないはずのクマまで、隠れる場所のない街なかに平気で出現し、且つ人間を怖がることなく攻撃対象としてる、ということだ。
ここを説明できなければいけない。
こういうかつてない現象が起こっていることを説明しようとする時は、統計学的見地からいえば、それを分析にかけるファクターにおいても、かつてないファクターを用意するのが筋だ。
つまり、ほかにも、かつてなかったような特別な周辺環境条件の変化が起きていないかを探し、ファクターとして加えなければ、最適解は得られない。ブナの凶作は何年間かに一度、これまでも周期的に起きていることなので、これだけでは「過去に類を見ないこと」の回答に、至れるはずがない。
この観点から導き出した、「過去に類を見ない」もう一つのこと。
それはシカの爆発的増加である。野生の動物の中で、クマもかなり増えているのだが、全く比較にならないレベルで、一番爆発的に増えているのが、シカなのである。大量のシカによって、山を丸坊主にされる被害が続出している。草木がなくなったことにより、山が保水力を失い、豪雨時に土砂崩れを起こした事例も、いくつか報告されるようになっている。シカの頭数もまた、「過去に類を見ない」頭数になっているのだ。この「過去に類を見ない」両者は、相互に関係があると、私は見ている。
ここで一つ見てほしい。私以外にもシカに注目した人物の記事が一つだけある。
■ 「人を食べるクマ」を山から街に追い出している“意外な動物”の正体とは？
人を狙って街にやってくるアーバンベアをどう減らすのか？
秋田で自衛隊派遣も検討されるなど、過去最悪ペースで増加する「クマ被害」。人間を恐れず人里を襲う「アーバンベア」の恐怖が日本中を覆っています。なぜクマはこれほど凶暴化し、被害が増え続けるのか？「クマは全て駆除すべき」という議論が高まる中、「本当の原因は別にある」と筆者は指摘します。クマを人里に追いやっている“ある動物”の存在とは。犠牲者を減らす、驚きの解決策に迫ります。
○ 「人間vsクマ」の戦いは新たなステージへ
いよいよ「怪獣退治」のようなムードになってきた。
秋田県内でのクマによる人身被害が50人を超えたことを受けて、鈴木健太県知事が自衛隊派遣を要請したところ、小泉進次郎防衛大臣が派遣の方向で調整をしているというのだ。
要請内容としては、主にワナの設置や見回りなどの「後方支援」。「そりゃそうだろ、自衛隊の仕事はあくまで国防であって、クマの駆除なんてやらせたら気の毒だ」という人もいるだろうが、過去には自衛隊が実際にクマと「対決」した記録もある。
1962年、北海道の標津町内の集落が深刻なクマ被害に見舞われた際、やはり派遣要請があり陸上自衛隊の第5師団27名の隊員が現地に向かった。パトロール中などでヒグマに遭遇した場合、発砲してよいという許可があったという。
1971年、北海道芽室町で自衛隊の航空機が遭難して捜索をしていた際に、ヒグマと遭遇した自衛隊が小銃によって射殺している。
ということは、今回も住民の警護やワナの設置をしている際に、陸上自衛隊とクマが「交戦」する可能性もゼロではないということだ。このような前例ができれば他自治体からの要請も増えるし、法整備も進んでいく。「人間vsクマ」の戦いは、ここにきて新たなステージに入ったのである。
そう聞くと「だったら自衛隊の装備や組織力を使って、殺すのではなく捕獲して山に返してやればいいだろ」という心優しい方もいらっしゃるだろう。
小さな子グマと母グマが連れ添っている映像とともに「猟友会によって駆除されました」というニュースが流れるのを聞いて、心が痛まない人はいないはずだ。しかし、犠牲者をこれ以上出さないためには「駆除」はやむを得ない。
今、全国で人身被害をもたらしているクマというのは、本来の生息地である山から下りてきて市街地周辺に生息し、住宅街などに繰り返し出没する、いわゆる「アーバンベア」と呼ばれる新しい時代のクマだからだ。
アーバンベアの特徴は人間を恐れることもなく、人間の気配を警戒することもなく、自ら人間と距離をつめて、襲いかかる点にある。
わかりやすいのは今年7月、北海道福島町で新聞配達をしていた52歳の男性を襲ったヒグマだ。
これは典型的なアーバンベアで、実は襲撃の4日前からこの男性の前に頻繁にあらわれていた。男性は母親に「ナイフを持っていった方がいいかな？」と不安を口にしていたという。町役場から700メートルのところで、発見された男性の遺体は全身に爪痕、腹部を中心に噛まれていた（7月21日 UHB）。
つまり、人間を恐れて警戒するどころか、人間を「獲物」として狙いを定めていた可能性が高いのだ。なぜそのように推測されるのかというと、実はこのクマ、4年前にも人を殺しているからだ。2021年7月、福島町内で農作業中だった77歳の女性がクマに襲われて亡くなっているのだが、現場に残った体毛のDNA分析から同じクマだと判明したのである。
これがアーバンベアの恐ろしさだ。市街地周辺で生息しながら、人間を恐れるどころか、「動きがのろくて、狩りやすい標的」と認識してしまっている。だから発見次第、「駆除」をしなくてはいけないのだ。
「それは極端な例だろ」というクマ擁護派の方もいらっしゃるだろうが、被害数を見ると、アーバンベアが増えているというのは紛れもない事実のようだ。
「朝日新聞」（10月26日）が集計したところ、今年4月から10月22日までにクマにより死傷した172人の中で、なんと66％に達する114人が市街地などの人里で被害にあっていた。全体の死傷者数も、過去最多ペースで増え続けているという。
実際に、各地でアーバンベアによる凶行としか思えない凄惨な事件が続いている。
宮城県大崎市では庭先でリードに繋がれていた体長50センチの柴犬がクマに襲われた。クマは柴犬をくわえて近くの森に消えた。
岩手県一関市厳美町では、自宅の庭で67歳の男性が死んでいた。引っかかれ噛みつかれた跡があったのでクマに襲われたのではないかと見られている。すぐそばでは、飼い犬も殺されていた。
秋田市雄和萱ヶ沢でもクマの目撃情報があった後、田んぼ近くの側溝でかなり損傷の激しい女性の遺体が見つかった。
このような形で人間を恐れず、人間に自ら襲いかかるようなアーバンベアを捕獲して山に返したところで、しばらくしたら市街地に舞い戻り、また同じ凶行を繰り返すだけである。
一度でも「人間の味」を知ってしまったクマが繰り返し人を襲うように、「人間密集地帯の味」を知ってしまったクマは、市街地から離れられず繰り返し犬や人間を襲い続けてしまうものなのだ。
アーバンベア対策には残念ながら「駆除」という選択肢しかないということがわかっていただけたと思うが、これはあくまで「対症療法」に過ぎない。これ以上、被害を広げないためにも「原因療法」に取り組む必要がある。
つまり、山の中に生息しているクマに人里に近づかせない、アーバンベア化しないような対策を講じていくのだ。
○ クマ対策として真っ先に駆除すべき動物とは？
では、どうするか。自治体によっては人里とクマの生息地に緩衝地帯をもうける「ゾーニング」を進めたり、オオカミ型のロボットが眼を赤く光らせて、鳴き声で威嚇をする「モンスターウルフ」の導入を進めたりしている。
しかし、個人的には国をあげて「シカの駆除」に力を投じるべきだと思っている。
なぜかというと、クマが人里に下りてくるようになった要因のひとつは、シカの「爆増」にあるからだ。
よく言われるが、山で人間を襲ったり、人里まで下りたりしてくるクマはわりと小さい。あまりいいものを食べていないのだ。
わかりやすいのは少し前、岩手県北上市の温泉旅館の露天風呂を清掃していた60歳の男性を襲って殺害したツキノワグマだ。男性の遺体近くで駆除されたこの個体は、冬眠直前にもかかわらず、かなり痩せていたという。猟友会の会長がメディアに答えたところでは、この時期の一般的な成獣の場合、身体には5センチくらい脂肪がついているものだが、それが全くなかったという。
では、なぜこんなに激痩せしているのかというと、冬眠前の栄養としてクマがたらふく食べる木の実が、シカによって日本の山から急速に消えているからだ。
林野庁の「森林におけるシカ被害の現状と対策」によれば、ニホンジカは本州だけでも246万頭（令和4年末）もいる。北海道のエゾジカも急増して73万頭（令和5年度）となっているので、合わせると軽く300万頭を超える「シカ天国」となっている。
「奈良のシカもかわいいし、たくさんいるのはいいことじゃん」と動物愛護の方は思うだろうが、実はこの300万頭が、日本の美しい自然を文字通り「侵食」している。
《生鳥獣による森林被害面積は、近年、全国で約5000ha、このうちシカ被害が約7割前後で推移》（同上）
《植栽木への食害、樹皮剥ぎ、下層植生の衰退などがあり、被害が深刻な地域では裸地化し、表面浸食が発生》（同上）
わかりやすく言えば、300万頭のシカたちが樹木を枯らして背の低いササやシダを消滅させ、土壌を壊すことで、いたるところにハゲ山をつくっているというのだ。なぜあんな可愛らしい動物が、そんなエグい自然破壊をするのかというと、「なんでも食う」からだ。
《イネ科草本からササ類、広葉草本、樹木の葉、堅果類(どんぐり)まで1000種類以上の植物を採食》（同上）
さて、ここまで言えばもうお分かりだろう。冬眠前のクマが痩せこけて、露天風呂にいた人間を襲うようになったのも、人里に下りてきてエサになりそうなものがないかと徘徊するようになったのも、つきつめていけば「山や森にある1000種類以上の植物を食べ尽くすシカが300万頭以上に激増した」ということが原因である。シカに山や森林を荒らされ、木の実を食い尽くされて、人里に下りざるを得なくなっているのだ。
だから、まずはシカを徹底的に駆除する。
環境省・農林水産省が2013年に策定した計画では、2028年までにシカは155万頭まで減らすということになっている。あと3年でこれが達成できるかは疑わしいが、猟友会を日給8000円とかでこき使うのではなく、政府が予算を確保して、しっかりと制度設計して、シカを少しでも減らすことを推進していくしかない。
そうすると、山や森の環境が多少は改善される。クマが十分に木の実を食べることができるので、痩せ細って民家に出没したり、市街地まで下りていって、人間がゴミとして排出する食べ物などを漁る必要がない。アーバンベアへ身を堕とすクマが減っていくのだ。
……という話をすると「シカを殺すなんてかわいそう」と言い出す人もいるだろう。確かに残酷に聞こえるかもしれないが、これは日本人がやらなくてはいけない「償い」でもある。シカの数を抑えて、環境破壊も食い止めていた存在を、自分勝手なエゴで絶滅させてしまったからだ。
それは、ニホンオオカミ、エゾオオカミである。両方とも「害獣」として我々の祖先の手によってこの世から永久に消えた種だが、実はこれらのオオカミがいたことで、山や森のバランスが保たれていた。
なぜかというと、シカを狩る捕食者だったからだ。先ほどの林野庁の資料にあるような自然破壊が防げていたのは、ニホンオオカミやエゾオオカミがシカを適度に減らしてくれていたからだ。オオカミがいた時代、山や森は豊かで木の実も豊富にあった。
クマはそれを食べて冬眠に備えていればよかった。また、クマは時たまオオカミからエサを横取りするので、捕食されたシカの死骸を食べることもあった。生態系の中で腹がしっかり満たされているので、わざわざ市街地周辺まで下りる必要がなかった。
しかし、日本ではオオカミは絶滅した。捕食者が消えてマタギのような職業ハンターも激減したことで、脅威がなくなってしまったシカは爆発的に繁殖することになる。
「クマは脅威じゃないの？」と思う人もいるだろう。YouTubeなどでも、クマが子シカを追いつめて襲う映像や、ワナにかかったシカを生きたままクマが捕食する衝撃映像が流れているからだ。
ただ、先ほど触れたように、クマがシカを食べるのはオオカミからの横取りスタイルだ。クマも走ると早いが、やはりシカの方が俊敏だし、警戒心も強いのでクマが近づくのも難しい。つまり、シカにとってクマはオオカミほどの脅威ではないのだ。
このように我々が直面している「クマ被害」の根本的原因を辿っていくと、かつてオオカミを「駆除」の名で絶滅させたことに突き当たる。自分たちの身勝手な理屈で、ひとつの種を地球上から永遠に消したことのツケを払わされているのだ。
動物愛護家の皆さんは「クマを殺すのはかわいそう」というが、実はすでに我々の手は血まみれで、これからも日本の自然を守るために何十万頭というシカを屠（ほふ）らないといけない。クマを殺すべきか、保護するのかという議論の前に、まずは「人間は他の種を大量虐殺して生きている」という厳しい現実と向き合うことが必要ではないか。
───── 以上、 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 2025.10.30より
シカに注目したところは大いに賛成だが、この論には２つの大きな間違いがある。
１つは、クマよりもシカの方がむしろ駆除しにくい動物だということだ。そもそもシカの増加を環境省は把握してるし、各地域においてシカの駆除目標は従来から立てられている。しかしながら駆除目標をまったく達成できていないのだ。実際に駆除できているのは桁違いに低いレベルにある。駆除しようとしても駆除できないからこそ、爆発的に増えてしまっているのだ。
一因としては、登録上は９万人いるはずの「第一種猟銃免許」（銃を撃てる人）の７割以上が、７０歳以上であるからだ（本当の絶滅危惧種は、動物ではなくて、第一種猟銃免許者である）。シカのように足の速い動物にはついていけない。シカの駆除はもっぱらワナに頼っているのが現状なので、ワナにかかる一頭一頭の単位でしか、駆除できていない。
記事に書かれている「対策」は、クマ対策のハードルをむしろ上げてしまっている。いい方法とは全く言えない。
もう一点の間違いは、森の主であるクマにおいては、その限りでないことだ。クマはシカのスピードに追いつけないというが、何も草原でかけっこ比べをするわけではない。森の中の身動きの取りにくいところにおいて立ち止まっているシカならば、クマにも狙える相手である。また、大人のシカを捕まえるのは困難を伴うとしても、警戒心が充分でない子ジカならば充分狙えるし、そもそもこれだけ大量にいるなら、最初から死んで横たわっているシカの肉を食べることもあるだろう。私は、シカ肉を食べたクマが、肉の味を覚え、肉食化してるのではないかと推測する。私も、この記事にあげられた事例は、明らかに人間を獲物として襲い、捕食しているケースだと思っている。食べる気だから、人間を襲うだけでなく、奥まで引きずっていってるのである。この、襲った人間を奥まで引きずっているケースについては、食べるための行為以外のなにものでもない。事例をもう一つ加えるなら、１０月３日、宮城県栗原市の山林にキノコ採りに出かけた女性がクマに襲われ死亡、別の女性がもう一ヵ月以上行方不明になっているが、これも捕食のため、引きずっていったと見ていいと思っている。こうした人間の捕食事例が、地域を問わず、散発的に起きているのは、アーバンベアといった特定地域のクマでないことを、同時に表している。この「地域を問わず、一部のクマが肉食化してる（広域性＋一定頻度）」という現象は、原因を、シカ肉を食べたことがあるクマか否かだと考えると、全部説明がついてくる。
また、このシカの爆発的頭数からすると、シカ肉を食べたか否かの話の前に、まずもって高頻度で、シカとクマは遭遇してるはずであり、とりわけドングリやブナの実を巡っては、両者共通の食べ物であるので、取り合いになってるはずである。シカ肉を食べないまでも、シカと衝突する、シカを攻撃する、といったことは森の中で頻繁に起きているのではないだろうか。
そして、そこでのシカへの攻撃習慣が、そのまま人里における人間への攻撃性に繋がっているのではないだろうかと、私は考える。また、実際にシカ肉を食べて、肉食化してるクマ（人間をも捕食するクマ）も、この仮説が正しければ、地域を問わず、一定確率で存在することになるので、（見た目でその識別はつかないから）クマ全体の危険性としても高まっている。
なお、人里近くのくくりワナにかかったシカを狙って、クマが人里に来るようになったのではないか、という説を言う人もいるが、それは、順序が逆だ。そもそも森の中、山の中で、シカ肉を食べている習慣があるからこそ、それをエサとして認識できるのであって、シカ肉を食べる習慣を持たないクマなら、ワナにかかったシカを見たところで、それをエサとは思わない。
逆に、くくりワナにかかったシカをクマが捕食する姿を見るのは、山の中でもクマがシカを襲うという行動が頻繁に行われていることの、証拠だと言っておく。
つまり、くくりワナにかかったシカにおいてのみ、クマの捕食行動が起きているのではない。それはそもそもクマがシカを捕食する行動が、山のあちこちで行われている中の、「一端」を垣間見ているにすぎないのである。
★ テリトリー化の懸念
もうひとつの要素として追加したいのは、「テリトリー化」だ。
餌場に限らず攻撃してくるということは、「シカとの争いによって、そもそもの攻撃性向が高まっている」ことに加え、そこにエサのあるなしにかかわらず、人間を見ると攻撃してくるというのは、「驚いてるから攻撃してくる」のではなく、テリトリー化ではないのだろうか。
そもそも人間がしている所有化区分や線引きは、動物にとっては知ったこっちゃないことだ。クマにとっての線引きは、クマ同士においてのみ、あるだけだ。自分のテリトリーから、他の動物は出ていけ！！そう思ってるから、距離が遠くても（至近距離にいなくても、視認すれば）攻撃してくるのではないだろうか。要するに縄張り化であるから、エリアの問題であり、そこにエサとなるものがあるのかどうかが不明な状態であっても、自分の縄張り内にいる動物は出て行け！の感覚で、攻撃してきてる面があるのではないのだろうか。
テリトリー化されると、やっかいなのは、ブナの実の時期に限らず、どの季節であっても、腹が減った時は、しょっちゅうエサを探しに街なかにやってくる、ということである。季節を問わず、年中、現われることになるだろう。単に「ブナの実が凶作だから」という理由で済んでいるのかどうかは、そこの季節性か否かで判断されることになるだろう。
こうなるともはや、侵略者との戦闘モードに近いのではないだろうか。人とクマとの陣取り合戦状態である。ここでこれを出すのは非常に不謹慎かもしれないが、事例として明瞭なものなのでいうと、福島の帰還困難区域では、数年して動物が先兵のように、不在にしてる家の中に侵入して、家の中を荒らしたり、街なかを闊歩するようになった。さらには十年以上経つと、田畑だったところには、山から飛んできた木々の種が育ち、人のいない田畑に森ができていた。自然というのは、そこにじっととどまっているものではなく、進出してくるものなのである。
日本人の中では感覚が薄いと思うが、人類が自然を圧倒しはじめたのは、たかだか産業革命以降のことであって、人類の長い歴史を見た時に、人間は常に自然と闘ってきている。人間は、自然と闘って、人間の居住エリアを確保してきたのである。これはれっきとした人類の歴史なのだ。近代世界以降、人類が圧倒してきたので、もう忘れてしまっている人も多いが、自然はもともと増殖能力を持っている。福島の帰還困難区域を見ると、自然の力は明らかである。人間の方が何もしなければ、自然は人間を侵食してくるくらいの能力は備えているのである。クマはその先兵であるのかもしれない。大袈裟なことを言えば、過疎化や耕作放棄地が進んでいる地域では、そこに町ができる以前の大昔の姿に、先祖返りしかけている前兆であるのかもしれないとさえ、思えてくる。世界的に見れば、森林伐採や環境破壊が問題だが、日本の一部地域では、「自然」の方が優勢で、人が「自然」に負け始めている地域があるということだ。クマを始めとする野生動物は、その先兵なのだ。
シカを喰う（＝人も喰う）肉食化熊、各地で。
■ 「やばい、クマじゃない？」中学校近くでシカ死骸を
全国各地で12月になってもクマの目撃情報が相次ぐ中、山梨県北杜市では中学校の近くにクマが現れました。
「やばい、クマじゃない？食ってる食ってる」
映像を撮影した女性によりますと、クマはシカの死骸を食べていました。
中学校の近くに現れたクマの様子
おととい、北杜市で女性が中学校から約200mの場所にある道路を車で走っていた際、体長70〜80cmほどのクマを見つけました。
クラクションを鳴らすと、クマは一度、その場を去りましたが、数分後に戻ってきて再びシカの死骸を食べていたということです。
北杜市は、外出する時に音の出るものを携帯する他、食べ物を屋外に放置しないよう呼びかけています。
───── 以上、 ABEMA TIMES編集部 2025.12.14より
◆クマは顔を攻撃する（再録）
■ 「もう戦争だよ」クマ被害急増に前秋田県知事が怒り 犠牲者の状態「本当にむごい」「葬る方だって惨め」
秋田市内の自宅で取材に応じた佐竹氏
○ 今年4月に知事職を勇退、クマ駆除への抗議電話に対する毅然とした対応でも話題に
全国各地でクマによる被害が相次いでいる。今年度のクマ被害による死者数は全国で9人（10月22日時点）と、統計を取り始めた2006年以降で過去最悪に。人を食べる目的で襲った食害のケースも複数報告されている。特に被害が深刻な秋田県で、長年クマ問題について強い発信を行ってきたのが、今年4月に知事職を勇退した佐竹敬久前秋田県知事だ。駆除への抗議電話に対し「お前のところにクマ送る」「（受話器を）ガチャン！」など、過激な発言でも話題を集めた佐竹氏に、クマ問題を巡る秋田の現状と今後を聞いた。
10月中旬、秋田市内の自宅を訪ねると、普段着姿の佐竹氏が出迎えてくれた。江戸時代から当地を治める秋田藩主・佐竹北家の21代目当主。立派な武家屋敷か、はたまた大豪邸かと覚悟していたが、閑静な住宅街によくなじんだごく普通の邸宅だった。
秋田駅からは徒歩50分ほどの距離で、歩いてきたことを伝えると「（クマは）出なかったか？ すぐそこの、うちの目の前でも1人やられたんだ。両目をやられて……むごいもんだよ。一番近い20メートル先のコンビニの前に出たこともあった。すぐ近所に5歳と2歳の孫もいる。（生家の）仙北の方なんか裏の山に10頭も20頭も出てる。本当に切実な問題」と、前知事としてよりもまず、地域住民としての本音を口にした。
なぜ今、クマ被害が急増しているのか。本題に入ると、佐竹氏は、度々ささやかれている「人間が山を開発したから」という俗説に対して真正面から異を唱えた。
「メガソーラーのせいだなんだ言われてるけど、まったく逆。人口減少で人が住むところがどんどん山から遠ざかって、里山が原生林化している。森が豊かになって増えたクマが、人間の生活の場に近づいてるんです。人口1000人の村周辺に、2000頭のクマがいるようなところもある。県で作った目撃情報の一覧マップもあるけど、実際はあれの3～5倍は出てますよ。だって届け出するたびに警察の調書に付き合わされるんだから。毎日出るようなところはいちいち報告してられない」
秋田県では増えすぎたクマに対処するため、直接人に危害を加えた個体以外にも、個体数調整として人里近くでわなにかかったクマの駆除を進めている。人を襲ったことのないクマまで駆除することや、登山や山菜取りなどで人が自ら山に入って襲われたケースなどでは、他県から抗議の声が寄せられることも少なくない。クマ問題に他する考え方は地域によってもさまざまで、中には「危険なクマは絶滅させるべき」「クマが出るところに人は住むな」など、両極端な声も存在する。
「都市部の人には分からないかもしれないけど、山に入るのも生活のうちなんです。山菜取りで年に200～300万円稼いで生計を立てているおばあちゃんもたくさんいる。クマが出るから今年は舞茸の出回る量が少ない。（岩手の）北上の方では祭りが中止になった。そうやって名産や活気がなくなって、ますます人が減っていく悪循環が起こります。年寄りは散歩ができない。子どもたちは外で遊べない。クマのせいで健康や成長、生活のすべてに影響が出る。こうなるともう戦争だよ、戦争。普段の日常生活を送れないんだから、戦時下と変わらない」
戦争と変わらない。そう強い表現を使うのも、佐竹氏が実際にその目でクマに襲われた被害者を見てきたからだ。
「顔面をやられるでしょ。仮に助かっても本当に人生が変わっちゃう。目をやられることも多いし、仕事もできなくなる。今の医療技術でも原形には戻らない。女性なんかもう外にも出られなくなっちゃう。本当にむごいもんですよ。食われた遺体なんか、人間の形をしてないんだから。見れたもんじゃないし、葬る方だって惨めですよ。生きたまま食われるなんて、こんなに怖くて惨めなことはない。あらゆる事故の中でも最も悲惨な亡くなり方をする。国には本当に、そういう想像力を持ってもらいたい」
───── 以上、 ENCOUNT 2025.10.23より
■ クマ外傷の9割は“顔面”を損傷「鼻を拾って外科手術で…」100例以上診た医師が語るクマ襲撃のリアル「精神的なダメージも深く」後遺症でかすむ日常
全国各地で相次いでいるクマによる人身被害。北海道内では7月、福島町で新聞配達員の男性（52）がクマに襲われて死亡しました。
また9月には札幌市西区でも、犬の散歩をしていた男性（43）がクマに襲われけがをしました。
こうしたクマによる負傷者の治療に、30年以上にわたり携わってきた医師がいます。秋田大学医学部附属病院の中永士師明（なかえ・はじめ）医師です。
これまでに100例以上の処置にあたってきた中永医師によりますと、クマによる外傷には特徴があると言います。
○ 被害者の9割が“顔面“を損傷
秋田大学医学部附属病院・中永士師明医師
「傷をうけた場所でいくと、ほとんど90％が顔なんですね。顔面外傷といいまして、顔の目から鼻、口、この辺のあたりをケガされる方が多いですよね」
負傷者の9割が顔面に深い傷を負うというクマ外傷。あごや鼻の骨が折れたり、顔が引き裂かれたり。
中には鼻を引きちぎられて、救助隊が現場に落ちていた鼻を拾って形成外科手術で修復したケースもあったといいます。
クマに襲われた患者のCT画像では、顔の骨が激しく砕けているのが分かります。
クマの攻撃で傷を負った部位のうち、顔面が90％、続いて腕70％、頭部60％、脚40％と上半身が圧倒的に多くなっています。
○ クマはなぜ顔面を?「少しでも体を大きく見せようと…」
秋田大学医学部附属病院・中永士師明医師
「クマも自分の方が強いんだとか、相手を威嚇しようと思うので、少しでも体を大きく見せようとする。最終的に立ち上がるような感じで飛びかかってくるので、人間の顔に当たってしまう」
クマは相手にとびかかって倒すと、ひたすら噛んでくるケースが多く、急所として顔を狙ってくると、中永医師は説明します。
「人間の顔を急所だと思って狙って、攻撃してくるイメージです。だから負傷部位として下半身は少ない。顔面や首、頸動脈や気管を負傷する人もいます」
○ 「鈍的外傷」に「鋭的外傷」が加わり重篤な傷に
クマに襲われた場合、衝撃による「鈍的外傷」に、鋭い爪や牙による「鋭的外傷」が加わるため、複雑で重篤な損傷を伴うと言います。
秋田大学医学部附属病院・中永士師明医師
「交通事故とか高いところから落とされているような傷だけではなく、ナイフとかでえぐられるような傷も交わるので、結構深い傷になってしまう。しかも骨まで折れてしまうので、やはり感染には注意しないといけない」
○ 精神的なダメージも大きく
クマに襲われると精神的なダメージも深く、事故を思い出す“フラッシュバック”や夜眠れなくなる不眠、何もないのに涙が出てくるなど、トラウマに悩まされる人も多いと言います。
そういった患者については、精神科の先生に入ってもらいながら、一緒に診るようにしているということです。
秋田大学医学部附属病院・中永士師明医師
「精神的な後遺症もかなりあります。傷もきれいに治ったはずなのに、いつまでもその傷が痛むとか、精神的なものが関わっているものもあります。やはり1人で抱え込まずに、病院を受診してもらうのがいいかなと思います」
また、中永医師は、北海道のヒグマは、本州のツキノワグマより体が大きく力も強いので、被害の大きさは比にならないとも話しています。
中永医師
「ツキノワグマよりもヒグマのほうが力も体も大きいですから、突進してくる力、振り回す力はツキノワグマよりもずっと強い。ぶつかってくる衝撃に加えて、刃物を持って飛びかかってくると思ってもらえれば…。時速50キロぐらいで突進してきます」
○ 万一襲われたら…とにかく首と顔を守る
もしクマに襲われた場合、どう身を守るか。クマと距離がある場合は、ゆっくり後ずさりするのが前提で、もしクマが飛び掛かってきた場合は、両手を後ろにやって、うつぶせに小さくなり、とにかく首と顔を守ることに徹することだと中永医師は強調します。
「クマは追跡本能があって走っていくものを追いかける習性があるので、我慢してゆっくり後ずさる。クマは相手が反撃してこないことがわかると去っていくため、それまでこの姿勢で我慢することが重要」
○ 4年前のあの日から一変した日常
安藤伸一郎さん（47）は4年前、出勤途中に、札幌市東区の路上でクマに襲われました。
安藤伸一郎さん
「車にひかれたのかな…というぐらいの衝撃でしたね」
2021年6月、札幌市東区の住宅街で住民4人が出没したクマに襲われました。そのうちの1人、安藤さんは背後から襲われ重傷を負いました。
安藤伸一郎さん
「最初の一撃で肋骨が6本折れたのと、あと右の肺に『肺気胸』と言って、穴が開いたのと。あと背中を引っかかれたので、背中だけで80針縫うぐらいの傷を負った。またどこかから何か出てくるんじゃないかという恐怖心があるので、夜になると後ろから何か来るんじゃないかっていうのは今もずっと思っている」
安藤さんは、病院の集中治療室に10日間入り、入院とリハビリは半年に及びましたが、4年経った今でも、傷は完治していません。以前と同じように働くことはできず、あの日を境に人生が一変しました。
安藤伸一郎さん
「脇は、しゃべってるときも痛い状態。何もしなくても痛い。これ以上よくならないけど、ちょっと力を入れたら痛い状態。重いものを持つとかしんどい。寝てても痛みで目が覚める状態。膝はサポーターをしてないと、痛くて遠くへ歩けない。クマがのっかったときに、ここに爪が入って中でも炎症が起きている。その炎症が治らないと医者に言われていて…」
仕事も以前のように働けなくなり、収入が減ったままの暮らし。さらに治療にかかる費用が生活を圧迫していますが、公的な支援はほとんどなく、将来への不安を募らせます。
「クマに対してを獣害ではなく災害というふうに考えてもらわないと厳しいと思う。これは一生モノで、あとはもう痛みと付き合っていくしかないね」
あの日以来、外出する際の恐怖心はぬぐえないという安藤さん。傷の痛みに耐えながら見る日常の風景は、4年たった今も暗くかすんだままです。
───── 以上、 HBC 北海道放送 2025.10.25より
◆乾燥につき山火事注意 山火事の99％が人為的原因
「地球温暖化だから山火事が多い」という言い方は、もの凄く誤解を生じやすい言い方だと思う。
まるで高温になったから自然発火してるみたいに聞こえるが、そんなことは起きていない。雷がたくさん落ちているというわけでもない。年間を通して乾燥化が進んでいて、とりわけ月によってはもの凄く降水量が少ない月が出るようになっている、というぐらいの意味だ。つまり温暖化によって、山火事が拡大しやすい環境が作り出されているということであって、直接の発火原因ではない。
直接の発火原因は、日本の場合、大半が人為的要因だ。
出火原因のほとんどはたき火や火入れ、放火（疑いを含む）、たばこなどの人為的なもので自然現象はまれである。約5万件の事例を分析した峠嘉哉・京都大学防災研究所特定准教授（水文学）らの研究グループの2024年報告によると、人が関与しているケースが全体の98.8%を占め、海外で目立つ落雷は1.2%にとどまる。
つまり、いくら山火事が拡大しやすい環境下にあるといっても、人為的な火の不始末がなければ、山火事はほぼ絶対に近いくらい起こらないのだ。このことを厳にお願いしておきたい。
なにしろ乾燥化が進んでいるから、どこも燃えやすく、火の拡大はあっという間だ。去年いけたから今年もいけるという保証は全くなくなっている。山で火を使うことは、極力慎んでほしい。毎年やってるから、だいじょうぶだという考えは捨てて欲しい。
■ 「“大規模山火事時代”に入った」頻発・長期化する山林火災の要因とは
13日も各地で火災が相次ぎました。専門家からは「“大規模山火事時代”に入った」と声も上がる中、頻発する山火事を検証、要因は空気の乾燥だけではありませんでした。（12月13日OA「サタデーステーション」）
○ 続く乾燥注意報 火災相次ぎ各地で死者も
東京都内では13日の夜、一時的に雨に雪が混じった状態に。埼玉県では午後9時半ごろに初雪の便りが届きました。13日には千葉県旭市の住宅が立ち並ぶエリアで火災が発生。東京都心では9日連続で乾燥注意報が発表され、12日から13日にかけて、火災が相次いでいます。全国では、多くの死者も出ました。大阪府守口市では住宅6軒が燃え、13日朝に2人の遺体が見つかりました。広島市では12日夜に繁華街のビルで火事があり、焼け跡から60代の男性客とみられる遺体が見つかりました。愛知県岡崎市では住宅が全焼し、焼け跡から1人の遺体が見つかり、札幌市ではアパートの1室から出火、80代の男性が搬送先の病院で死亡が確認されました。
○ 「大規模山火事時代」専門家が危機感
関東では今週、自衛隊に災害派遣が要請されるほどの、大規模な山火事も相次いでいます。月曜には、群馬県富岡市の妙義山で火災が発生。火曜には、神奈川県伊勢原市にある日向山で火の手が上がりました。火がついた塊のようなものが山の斜面を転がり落ちていき、止まった場所で激しく燃え上がる、といった、“飛び火”のような現象も確認できます。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「日本でも10年20年の時間で考えると、山火事が増えていく“大規模山火事時代”に入ったと考えます」
危機感を口にしたのは、山火事に詳しい日本大学の串田教授です。日向山の周辺で気にかけていたのは、土の湿り具合を表す「土壌水分量」です。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「こちらは8.4％ですね。10％以下ということで極度に乾いた状態」
通常、この時期の山の土壌水分量は20％ほどで、10％以下だと、土の上に積もった落ち葉などもかなり燃えやすい状態になるといいます。関東ではこの1か月、雨がほとんど降らず、東京都心の降水量は平年のわずか1％。前橋の降水量は0ミリです。今年秋の3カ月間でみても、東京都心では、今世紀に入って最も少ない降水量を記録しています。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「今後、乾燥の季節が訪れるので、今以上に乾燥が進むリスクがある。火災のリスクが上がっていくことも考えられる」
○ 大規模山火事を検証 長期化の一因「燻焼」とは?
ひとたび、大規模な山火事が起きると、鎮火までにかなりの時間と労力を要します。実は、妙義山と日向山の火災も、延焼の恐れがなくなる「鎮圧」はできたものの、再燃の恐れがない「鎮火」までには至っておらず、13日もそれぞれ現地で調査などが行われています。
日向山では、12日、煙も出ていないような場所にヘリから水を撒いていました。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「熱源があるんだと思う。燻焼（くんしょう）って言うんですけど、くすぶり続けている」
「燻焼」とは、土の中などがおよそ500℃の高温となり、炎も出さずにくすぶっている状態をさします。
山火事発生2日目、日向山では白い煙が上がっているものの、炎は見えません。しかし、サーモカメラで見ると、広範囲に「燻焼」とみられる熱源が映っていました。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「地中深くでくすぶっているので、なかなか消し止めるのは難しい。完全に消し止められなければ、また大きく再燃する可能性がある」
今年2月、岩手県大船渡市で発生した山火事が、鎮火に至ったのは、なんと、発生41日目でした。延焼範囲が平成以降、国内最大で、市の総面積のおよそ1割が焼け、鎮火を確認するために広大な範囲の調査が必要だったためです。現地調査を行った串田教授は、ここでも「燻焼」が起きていたといいます。
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「大船渡では土を掘り返して火種を見つけて、そこに水をかけるというようなことをしていた」
熱源が地中2メートル付近まで潜り込み、発生から1か月ほどが経っても、断続的に白煙が上がるような場所もあったとの報告もあります。
○ たき火やたばこに罰金も「林野火災警報・注意報」運用開始へ
この大船渡市の山火事を教訓にして、来月からは、全国でたき火や喫煙に関する規制も強化されます。直近で雨が降らず、乾燥注意報と強風注意報が重なった場合などには、市町村が「林野火災警報」を発令できるようになります。指定区域内でのたき火やタバコを禁止し、違反者には罰金や拘留を科すことも可能です。実は、国内の山火事の原因の99％近くが、たき火や火入れ、タバコなど、人為的なものだったという、データもあります。（京都大学防災研究所・峠嘉哉特定准教授らの研究グループ）
日本大学 生物資源科学部 串田圭司 教授
「ちょっとした火の不始末で大きな山火事につながる。これまで以上に火の取り扱いに注意をしなければいけない」
───── 以上、 テレ朝ニュース 2025.12.14より
◆「こういう人もいるよ！！」
東京の地元選挙区では有名な方ですが、東京以外の道府県ではあまり知られていない方のように思うのです。
不登校でも、こんな人もいるよと、知って欲しくて、載せておきます。
■ 不登校から1年、救われた親の一言 私が都議になるまで
不登校を経て弁護士になり、2021年7月の都議会議員選挙で初当選した五十嵐衣里さん
7月の東京都議会議員選挙で初当選した弁護士の五十嵐衣里さん（37）は、同級生から嫌がらせを受けた中学2年から、不登校になりました。高校には進まず職を転々とした時期を経て、24歳で大学に入り、議員秘書、弁護士、そして都議に――。その道のりや思いについて聞きました。
◇
中学2年の途中で、学校に行くのをやめました。（数字や文字でメッセージを伝える）ポケットベルで、クラスの複数人から悪口を言われたことがきっかけです。「キモイ」とか「シネ」とか、わざわざ公衆電話から送ってくるんです。ターゲットにされてまもなく、登校をやめました。
親は「とにかく行きなさい」。家にいられず、友人宅やカラオケボックスで時間をつぶしました。全く安らげず、当時のことはあまり思い出したくないです。
1年くらいたって、親が「学校に行かなくていいから一緒に夕食を食べよう」と言ってくれて、すごく楽になりました。2日くらい帰宅せず、何も食べないこともあったので。
不登校のまま中学を卒業。飲食店でアルバイトを始めました。
いま思えば転機だったのは、正月のシフトについて店長ともめ、「明日から来なくていい」と「クビ」にされたことです。悔しくて調べたら、労働基準監督署というものがあると知り、相談したら「不当解雇だ」とバイト先に連絡してくれて、30日分の給料が支払われました。法律を知らないと搾取される一方なんだ、と思い知りました。
その後、トラック運転手など職を転々としました。
でも、賃金が低く、将来も上がる見込みがない。このままではまずいと思いました。もともと勉強は好きだったので、自分の特性を生かすために勉強をしようと、22歳で高校卒業程度認定試験（元の「大検」）に合格。24歳で大学の夜間コースに入り、法科大学院に進みました。
大学では、社会の不公正や行きすぎた資本主義について、よく議論しました。さまざまなバイト先で、個人の努力ではどうにもできない環境にいる人たちを見てきたので、「稼いでいる人=（イコール）価値がある人」という価値観や自己責任論には強い違和感がありました。
30歳で司法試験に合格し、国会議員の政策担当秘書を4年間務めました。弱い人にしわ寄せがいくのは政治のしくみがおかしいからではないか。そうした思いが強くなったからです。
昨年、弁護士登録し、若者からのLINE相談にもかかわってきました。コロナ禍で「死にたい」という声が増えました。今後は議員として、自殺対策や、生きづらいと感じている若者の支援に力を入れたいです。
学校に行かない時期があっても、いつでも学び直せます。だから、子どもから「学校に行きたくない」と言われたら、親はその意思を120%尊重してあげてほしいです。どんなことになら力を発揮できるのか。それは人それぞれだし、いろいろ経験してみないと分かりません。「正解」はない。私が言えるのは「こういう人もいるよ」ということだけです。
◇
〈いがらし・えり〉 1984年、愛知県出身。中学2年で不登校になり、卒業後、職を転々とする。22歳で高校卒業程度認定試験に合格し、24歳で静岡大学夜間主コースに入学。名古屋大学法科大学院に進み、30歳で司法試験に合格。議員秘書や弁護士活動を経て、7月の東京都議会議員選挙で初当選した。
───── 以上、 朝日新聞デジタル 2021.8.29より
■ 「国会議員やめてください」 出産報告した女性議員に心ない言葉
立憲民主党の五十嵐衣里衆院議員（41）＝東京30区＝が今年10月、第1子を出産し、約1カ月間の出産休暇を取得した。国会改革の一環で、衆院が「産前6週間、産後8週間」の休暇期間を明記するルール改正を申し合わせてから初のケースとなった。ただ、五十嵐氏は妊娠を周囲に隠し、ぎりぎりまで仕事を続けていた。「公表するのが怖かった」。そう五十嵐氏が語る理由は何なのか。
○ チュニックでおなかを隠し国会へ
「私事ではございますけれども、念願の第1子を出産しました」。五十嵐氏が報告したのは臨時国会初日の2025年10月21日。首相指名選挙を行う本会議前の党会合だった。多くの同僚議員は「妊娠していたことも全く知らなかった」と驚いた。
妊娠が分かったのは通常国会開会中の2月。おなかが大きくなってくると、丈の長いチュニックを着るなどして隠した。
理由の一つが、過去に何度か流産した経験だ。
最近では東京都議だった昨年、妊娠12週で流産した。「こんなにつらいことがまだ、この世にあるんだ。妊娠したからといって、当たり前に生まれてくるわけじゃないんだ」と落ち込んだ。
妊娠を明かしたら、流産についても公表しないといけないことがブレーキになった。41歳という年齢もあり、安定期を過ぎても、安心できる日は一日もなかった。
本予算が成立し、各委員会の審議が活発になる4、5月ごろは、つわりのピークと重なった。つわり対策にグミやオレンジジュースを持ち歩き、一度も委員会を欠席しなかった。4月は安全保障委や文部科学委などで計5回質問に立った。
五十嵐氏は都議を経て昨秋の衆院選で初当選したばかり。「1期目だから、なるべく仕事をしたいという思いがあった。妊娠を公表すると仕事を任せられないんじゃないか、という不安もあった」と振り返る。
6月の都議選や7月の参院選では、炎天下でも選挙応援に奔走した。「おなかを押さえながら、ガタガタと揺れる車でウグイスをやった」
○ 体当たり、チラシ破り、殺害予告…
妊娠を公表しなかったもう一つの理由が、交流サイト（SNS）や街頭などでバッシングを受けることへの恐怖だ。
普段から街頭演説やビラ配りをしていると、体当たりされたり、チラシを破られたりするのは「日常茶飯事」。都議時代にはSNSで殺害予告を受け、刑事事件になったこともある。
心身が不安定になる妊娠中にバッシングを受けるリスクは避けた方がいいと考え、家族以外には伝えず過ごした。
8月に入ると、出産時期と臨時国会が重なる可能性が出てきたため、党幹部に相談。一部の支援者にも妊娠の事実を伝えた。
石破茂首相（当時）の退陣論や衆院解散説が出回っていたこともあり、支援者の第一声は「妊娠していて選挙に出られるの？」「党から公認をもらえるの？」だった。「他の陣営から『何も仕事ができていない』と批判されるんじゃないか」と心配されたこともあった。
10月2日に出産。高市早苗内閣が発足した翌日の22日から出産休暇を申請し、自身のホームページやフェイスブック、公式ラインでも報告した。
返ってきたのは、ほとんどがお祝いの言葉だったが、公式ラインでは「じゃあ国会議員やめてください」という心ないメッセージも届いたという。
○ 在職中の出産は戦後21人
国立国会図書館の調査によると、戦後、在職中に出産した国会議員は五十嵐氏を含め、21人（11月現在）にとどまる。
最初のケースは、1950年の園田天光光（てんこうこう）氏。45年に女性の参政権が認められて誕生した初の女性国会議員39人の一人だ。出産8日目で法案の投票のため職場復帰し、翌51年にも出産した。その後、半世紀近くにわたり議員が出産した記録は見つかっていない。
2人目は橋本聖子元五輪担当相。2000年4月に出産したが、その前日まで参院本会議に出席していた。退院2日後に早速、本会議に出席し、「スピード復帰」と話題になった。
参院は同年3月、橋本氏の出産を前に、議員の欠席理由として「出産」を明記する規則改正案を可決。出産に伴う休暇は当然の権利だと超党派の女性議員から声が上がったのがきっかけだった。01年には衆院も同様の規則改正をした。
小渕優子元経済産業相は07年と09年に出産。野田聖子元総務相は11年に出産するなど、近年、在職中の出産は珍しくなくなっている。
ただ、17年に第1子を出産した鈴木貴子衆院議員（自民党）はお祝いや激励の一方で「任期中の妊娠はいかがなものか」「職務放棄ではないか」という批判があったことをブログで報告。議員の出産に不寛容な意識はいまだに残る。
○ 国会のルール整備は道半ば
衆院は今年6月、出産に加え育児や介護などを欠席理由として明記することを議院運営委員会理事会で申し合わせ、11月の本会議で規則改正案を可決。任意で申請していた出産休暇期間についても、労働基準法に準じて原則「産前6週間、産後8週間」とした。
五十嵐氏は「在職中でも出産するのが当たり前になれば、出産を諦めたり、時期を迷ったりする人もいなくなる。出産だけでなく、いろんな事情を抱える人がいるのが当たり前の国会にするためにも両立させたい」と意気込む。
ただ、現状ではオンラインで議案採決に加われないなど、議員活動と出産・育児の両立には課題もある。
近年、女性議員の数は増加傾向にある。昨秋の衆院選では過去最多の73人が当選。今夏の参院選でも過去最多の42人が当選した。一方で全体に占める割合は衆院で15・4％、参院は29・8％にとどまり、欧米と比べると低い。
ジェンダー問題に詳しい瀬地山角・東大教授は、女性議員の少なさが、出産や育児に関する国会のルール整備の遅れにつながっていると分析。「特別な事情がある場合には、オンライン投票による議事参加を認めるなどのルール改正を進めるべきだ」と提言する。
在
───── 以上、 毎日新聞 2025.12.1より
◆いまロシア国民の戦争観はいかに？
■ 指名手配のロシア人政治アナリストが語る ロシア国民の戦争観
ロシアによるウクライナへの全面侵攻は開始から3年9カ月に及ぶ。一般のロシア国民はこの戦争をどう受け止めているのだろうか。「外国のスパイ」としてロシア政府から指名手配されている著名な政治アナリスト、ロシア人のフョードル・クラシェニニコフさん（49）＝ブリュッセル在住＝に実情を聞いた。前後編に分けて掲載する。前編は、ロシアの一般国民の戦争観や戦争を持続可能にする社会の現実について。
――ブリュッセルに移住した経緯を教えてください。
・私は、旧ソ連で現在はカザフスタンの都市アルマトイに生まれ育った。1990年代後半にロシア中部エカテリンブルクに移り、ウラル大学で哲学を学んだ。2000年以降は広報コンサルタントとして働きながら、著述活動を続けてきた。著作の内容などを巡り、ロシア当局に目をつけられ、20年に「権力への度重なる侮辱」の罪で7日間拘束された。
その後、リトアニアの首都ビリニュスに移住したが、22年9月にロシア法務省から事実上のスパイとみなされる「外国の代理人」に指定された。23年にブリュッセルに移り住み、24年8月に内務省から指名手配された。ロシア国内に残る家族や友人とは日々、連絡をとりあっているが、ロシアに戻ることができない状態だ。
――ロシア社会の現実は外国になかなか伝わらない印象です。ロシアのプロパガンダの影響でしょうか。
・ロシアのプロパガンダだけではない。ウクライナによるプロパガンダも影響している。
ウクライナのプロパガンダは、ロシア人は単一の集団であり、個々人の違いはないという見方をする。実際にはロシア人は一枚岩の集団ではない。
そして、ウクライナのプロパガンダは「全てのロシア人が戦争を支持しており、誰もウクライナ人のことを気にかけていない。彼らはプーチン露大統領を支持し、戦争に喜んで参加する意思がある」と強調する。
――ロシア国民はウクライナ侵攻をどう捉えていますか。政府を批判する言論の自由はありますか。
・ソーシャルメディアに投稿しただけで逮捕されたり、罰金を科されたりする可能性があり、人々はそれを恐れている。
ただ、重要なのは、ロシア国民の相当部分がウクライナ侵攻に無関心で生活しているということだ。多くの人は最前線から遠く離れた大都市に住んでおり、戦闘の現実を認識せずに自分たちの生活を続けている。
プーチン氏はすでに25年間も国を統治していて、国民の中にはプーチン氏以外の大統領を知らない人もいる。彼らは現状を当然のこととして受け入れ、自分たちが変えられるとは考えていない。
――欧州や日本による経済制裁については、ロシア国民はどのように見ていますか。制裁はロシア国民の日常生活にどこまで影響を与えているのですか。
・自動車のような西側製品がロシア国民に届かなくなったほか、銀行カードでの国外への送金ができなくなるなどの問題が起きている。これらは人々が戦争の影響を実感する部分ではある。
ただ、企業やロシア経済の特定の分野に影響を及ぼしていたとしても、一般国民は制裁の影響を深刻に受け止めるレベルには至っていない。
プーチン氏はプロパガンダを流し、「（制裁は）あなたたちを狙ったものだ。あなたたちを苦しめている悪者は彼らだ」と説明している。
――物価は上昇しているようです。
・インフレは最も貧しい人々を苦しめている。こうした人々は戦争前から生活が苦しかったが、物価の上昇でさらに状況が悪化した。一方で、生活に困窮した人の中から、戦争に行こうと考える人たちが出てきている。
非常に貧しい人々にとって、政府が志願兵に提示する報酬額は想像すらできないほど高額だ。また、犯罪に手を染めてでも金銭を得たいと考えている人々にとっても戦争に行くことは好都合だ。戦地に行くだけで報酬を得られ、戦後には名誉も得られるからだ。
一方で、富裕層は制裁に適応し、ビジネスモデルや事業内容を修正して戦争から利益を得ている。こうした人たちは、モルディブやアラブ首長国連邦で優雅に過ごしている。こうした格差が現実にある。
典型的な低所得層出身の兵士の例を経済的・社会的に説明しよう。例えば、40～45歳の男性はすでに両親を失っており、妻と成人した子供がいるが、関係は悪化している。そして大手銀行から受けられる融資はなく、小規模な金融機関に多くの小口債務を抱えている。少額の借金も積み重なると非常に大きな金額になる。この人物は、戦争に行かない限り、借金を返済することができない。
教育を受けていない人々の中には、ウオッカなどの酒に溺れる人がいる。こうした人たちは「失うものなど何もない」と考える。このまま惨めに死ぬか、それとも戦争に出て大金を稼いで国家にも認められるかの選択となる。戦争への参加は、一種の承認欲求を満たし、自分が役に立つ存在だと感じることができる手段となる。
――戦地に派遣される兵士の多くは地方出身者です。その多くは戦死しています。ロシア政府はこの種の不公平な社会状況を認識しているのでしょうか。
・もちろん認識している。プーチン政権は非常に警戒心が強い。プーチン氏は79年のアフガニスタンへの軍事介入や、94年12月からの南部チェチェン共和国への軍事介入（第1次チェチェン紛争）から教訓を得た。チェチェンへの軍事介入では、大都市出身の若者が徴兵され、十分な訓練を受けないまま戦地に送られた。大都市の人々はそれを快く思わなかった。彼らは戦地に送られた人々を個人的に知っていたからだ。都市部の兵士の母親たちから抗議運動が起きた。
こうした人たちは知性があり、社会的に活動的な人々の重要な集団と何らかのつながりを持っていた。彼らは物語を作って記事を書き、「我が子が死んだ」と語り、ジャーナリストとも連携した。
今回、戦地に送られているのは主に地方出身者だ。この場合、都市の人々は怒らず、驚かない。都市に住み、仕事や家族、社会的つながり、友人を持つ人々は、金のために人を殺しに行くようなことはしない。しかし、貧困地域や衰退した村落に住む者たちは、社会的なつながりを持たず、自らそこへ向かう。だから適切な人材を選別して戦地に送り込む特別なシステムなど必要ない。彼らは自らやって来るのだ。
――都市部の人々と地方の人々の間には、つながりはないのでしょうか。この不公平な状況に、都市部の人が怒りの声を上げることはないのでしょうか。
・もちろん都市と地方の人々の間に何らかの交流はあるが、非常に弱く、確立されたものではない。親戚の親戚といった関係で、家族や友人とは程遠い存在だ。
さらに、仮にそうしたつながりが存在したとしても、政府の報道統制などが強化されており、90年代のように現地で起きている惨状を世界に伝えることは以前より難しくなっている。
戦争に行くことを拒否できる人々と、貧しくて他に生活の手段がない人々との間に分断がある。
――政府が地方の発展に意欲を持たないのは、現状の貧困を都合の良いことと考えているからですか。
・プーチン氏は貧困層を貧困のままにし、地域開発や人々の生活向上のためには一切努力をしない。テレビなどを使ってプロパガンダを駆使し、大衆を操ろうとしている。特に教育水準が低い人々は、ロシアのテレビで活発に流されるプロパガンダに影響されやすい。
現在のプーチン政権のロシアは極めて厳しい資本主義国家であり、所得格差が非常に大きく、国民の富や健康などを保障する社会政策は大幅に縮小されている。
私自身の見解だが、プーチン氏がロシア国家、そして貧困層に対して持つ認識は一種のファシズムに近い。
つまりプーチン氏は地方の低所得者を、いわば使い捨ての材料として捉えている。彼らの多くはアルコール依存症であり、社会に十分貢献していないとみなし、志願者を戦地に送ることは、彼らにとって良いことをしていると考えている。政府にとっては、彼らが戦死すれば、社会保障費や年金を負担しなくて済むし、支援に煩わされることもない。
刑務所から戦場に送り込まれる人々もそうだ。彼らを刑務所から連れてくれば、そこにいる人々の生活費を負担する必要がなくなる。
───── 以上、 毎日新聞 2025.12.10より
■ 「象徴的意味あるが」 ロシア人政治アナリストが語る経済制裁の影響
ロシア政府から指名手配されている著名なロシア人政治アナリスト、フョードル・クラシェニニコフさん（49）＝ブリュッセル在住＝へのインタビューの後編は、ロシア国民が制裁国である欧米や日本をどうみているのかなどについて聞いた。
――経済制裁でロシアの経済状況を悪化させれば、ロシア国内で抗議運動が起きてロシア政府への圧力が高まる。そう考えるのは現実的ではないですか。
・プーチン露大統領に近い大企業家や腐敗した官僚たちは、制裁の影響をそれほど受けず、ビジネスを継続させている。
「制裁を科せばロシアの国内情勢に影響を与えられる」という西欧や日本などの認識が誤っているのだ。ウクライナのプロパガンダや、そうしたメッセージを伝えてきたロシア系移民の一部にも責任の一端があるかもしれない。
――対露制裁を西側諸国や日本が続けるのは、ウクライナ支援のために行動を起こしていると世界に示す必要があるということでしょうか。
・確かに制裁には象徴的な意味があるだろう。現在の制裁は、ロシアが2014年にウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した段階で科すべきだった。
クリミア併合後の8年間、プーチン政権はロシアの経済構造を再構築し、制裁の脅威に対応できるよう変革を進めた。西側諸国はその8年間、ロシアでは何も起きていないと思い込んだ。
プーチン氏は制裁に備えてロシアの経済システム全体を改変した。国際決済ネットワークである「国際銀行間通信協会（SWIFT）」の代替手段となる「SPFS」を開発、普及させ、ビザカードやマスターカードの代わりに独自の「ミールカード」を普及させた。西側諸国の制裁発動時に即応できる体制を整えた。
西側諸国のもう一つの過ちは、ロシアという国の耐久性、軍事力、戦争準備態勢を過小評価する一方で、ウクライナの結束力、軍事力、巨大国家との戦いへの準備態勢を過大評価したことだ。これは現在でも修正可能か確信が持てない過ちの一つだ。
――日本人は戦時状況や戦時経済について議論する際、第二次世界大戦中の厳しい状況を思い浮かべます。食糧や基礎物資が不足していた状況です。しかしロシアの状況は異なるようにみえます。
街の中心部にある広場の噴水で遊ぶ子どもたち＝ロシア西部クルスクで2025年7月24日、山衛守剛撮影
・私たちの祖父母や親族は第二次世界大戦を経験しており、爆撃下での生活や戦争の脅威が何を意味するかを知っている。私たちも映画で見たり、親族から話を聞いたりして、戦争とは何かを理解している。しかし、今、そのような状況はどこにも存在しない。どこか遠くで特別軍事作戦が行われているが、自分たちに影響はないというのがロシア国民の認識だ。
ウクライナのメディアは、ロシアのガソリンスタンドに石油やガソリンがなく、ロシア国民の生活水準も低下しているというナラティブ（物語）を示す。
しかし、ロシアに住む私の両親でさえ「劇的な変化は起きていない」と話している。確かに物価は上昇しているが、必要なものは全てそろっている。スーパーに行けば食料品は全て購入できる。つまり第二次世界大戦時のような状況とは異なる。
ウクライナメディアはこうした（制裁や攻撃が効いているという）物語を、自国民を精神的・心理的に支えるためにも利用している。なぜならウクライナ国民は爆撃や無人航空機（ドローン）による攻撃の下で生活しているからだ。
――ロシア国民の目に、制裁を科す欧米や日本などはどう映っていますか。
通りを歩く市民ら＝モスクワで2025年2月24日午後2時2分、山衛守剛撮影
・これも人によって認識は異なる。貧しい人々や教育を受けていない人々はテレビの影響を受ける。憎むように仕向けられている相手、例えばアメリカ人やイギリス人などには否定的な感情を持つだろう。しかし、中産階級の一定層は欧州や米国など外国への渡航経験のある人たちだ。彼らは特定の国や国民を憎んではいない。ロシアを悪者として発言する国の政府や大統領、指導者らを憎む傾向がある。
日本については、ロシア人の間に憎悪の感情はほとんど存在しない。むしろ、きちんとした人々が生活する、技術的に発展した国として認識されている。ロシア国内に多くの日本製の技術製品（機器など）が流通していることや、日本料理を提供するレストランが多数存在することなども影響している。
――ロシアは現在、中国と接近しています。ロシア国民は中国についてはどう思っているのでしょうか。
中国の李強首相（右）と握手を交わすプーチン露大統領＝モスクワで2025年11月18日、ロイター
・ロシア政府のプロパガンダが描く中国のイメージは「ロシアに対する大規模な支援」「深い友好関係」「西（欧州）から東（アジア）への転換」といった物語で構成されているが、国民の印象はそれほど良いものではない。
日常生活を送る普通の人々は、中国との緊密な関係を特に感じていない。彼らは依然として中国を非常に警戒し、ある意味で恐れている。中国は非常に大きな国であり、ロシア領土の一部を併合する可能性すらあるからだ。
中国語への理解も中国文化への深い知識もなく、人と人との真のつながりもない。だからこそ人々は彼らを恐れている。ビジネス上の関係はあるが、身近な存在ではないという認識だ。
――北朝鮮についてはどうですか？ ロシア国民は北朝鮮からの支援を認識しているのでしょうか。
・日本と韓国のソフトパワーの方がはるかに発達していることを強調したい。人々はポップカルチャーを楽しむために日本語や韓国語を学ぶ。
ロシア人が北朝鮮の人々と接する機会は極めてまれだ。例えば、ロシアに派遣されて建設現場で働く北朝鮮人を見かけることはある。だが彼らは非常に閉鎖的で、会話には応じず、交流もせず、ただ労働のために来た抑圧された人々だ。政治的な協力関係は存在するものの、北朝鮮自体が非常に閉鎖的な国であり、実際にロシア人が訪れる機会も限られている。
一方、北朝鮮国民の指導者崇拝の文化や、異様な指導者像は知られている。北朝鮮は強く国民が結束し、米国に対抗する国であるという認識も存在する。ソ連時代を経験した年配の人たちや、地政学的プロパガンダに影響されながら育った人々の意識の中では、確かに「我々は米国に対抗しており、北朝鮮は我々の同盟国だ」という考え方がある。しかし一般の国民はそうではない。
――将来的にロシアが戦争を放棄するシナリオはありますか。
・残念ながら、その可能性は考えられない。制裁は確かにロシア経済に打撃を与えるが、戦争のための予算には大きく影響しない。つまり、社会保障支出や医療支出などは削減されるだろうが、戦争は持続される。政府は依然として前線に資金を投入し、継続するだろう。もしプーチン氏が死亡すれば、何か変化が起こるかもしれない。
ウクライナ国内の状況を注視することも重要だ。プーチン氏の期待と戦略は、ウクライナが先に資源を枯渇させ、降伏すれば戦争が終わるという期待に基づいているからだ。ウクライナはロシアより国土が狭く、経済状況はロシアよりもはるかに厳しい。だからこそプーチン氏は戦争を継続しているのだ。
――トランプ米大統領とロシアの和平に向けた交渉についてどうみていますか。
・トランプ氏にとって戦争を終結させることが何より重要であり、戦争の結末がどんな形になるかは問題ではない。プーチン氏も戦争を終わらせたいと思っており、そこで両者の利益が一致している。
米露の間では、「現在の前線」で戦争を止めることで、両者はすでに合意に達しているとさえ考えることができる。プーチン氏は、この前線をさらにウクライナ側へと押し進めたいと考えており、目標の領土を占領した時に「これで前線は確定だ。戦争を終わらせても構わない」と言うだろう。そして、トランプ氏は答える。「よし、これでノーベル平和賞を受賞できる」と。
――ロシアでは国民の国外流出が起きています。フランスのシンクタンクのリポートによると、その数はロシア革命時に匹敵する100万人規模とされ、大半は45歳未満の若い高学歴層だと言われています。この人口流出の影響をどう考えますか。
・国外に移住した人々は教育水準の高い専門職の人が多く、ロシアにとって打撃だが、その影響は致命的ではない。またそうした人たちの中には、西洋社会になじめず惨めな生活を送っている人たちもいれば、外国で必要とされず、居場所を見つけられずに帰国した人たちもいる。
一方、国内に残った教育水準の高い人たちは、需要が高まったことでさらに多くの収入を得ている。私の知人の中にも、ロシアに残って働き続けたことで以前より多くの収入を得ている人もいる。
───── 以上、 毎日新聞 2025.12.10より
◆イスラエルがガザ地区への搬入トラックを制限。「パレスチナ人と共存できない」とするイスラエル政府の姿勢は何も変わらず。ガザ住民がいくら死んでもお構いなし。
アメリカ等の外圧があって止めているが、ネタニアフ政権内は、依然「パレスチナ人と共存することはできない（つまりパレスチナ人を殲滅する）」と、攻撃継続を主張する強硬派が占めている政府なのだ。
だから、なにかにつけ「合意を守っていない」と難癖をつけて、スキあらば攻撃を再開したくて仕方がないし、攻撃がダメなら、飢餓や凍死でカザ住民が減ってくれればいいと思っている。
この停戦は全くもって予断を許さない状況だし、むしろ攻撃は陰湿に継続中だと言っていい。
こんなネタニアフ政権下で本当の平和は来ない。イスラエル国民は、政権交代に動くべきだ。
■ ガザ大雨で14人死亡 続く支援物資搬入制限 人道危機深刻化の恐れ
パレスチナ自治区ガザ南部のハンユニスで2025年12月11日、大雨の後で冠水した通りを移動する住民ら=AP
パレスチナ自治区ガザで、大雨による被害が拡大している。イスラエル側が停戦後も支援物資の搬入を制限するなか、冬の到来で人道危機の深刻化が懸念されている。
ロイター通信などによると、ガザ南部のハンユニスの避難民キャンプで11日、テントで避難生活を送っていた生後8カ月の女の子の乳児が寒さで死亡。ガザを襲った大雨でテントが冠水し、母親が目を覚ますと雨風にさらされていて亡くなったという。
各地の避難民キャンプや周辺も大雨の被害を受け、パレスチナ通信は12日、少なくとも14人が死亡したと報道。国際移住機関（IOM）は11日、「約79万5千人の避難民が洪水のリスクにさらされている」と発表した。
現地では最低気温が10度前後まで低下。住民は寒さや雨をしのぐために室内でもダウンジャケットを着たり、テントのシートや毛布を２重にしたりしている。
2023年10月に始まったガザでの戦闘によって、多くの住民がテントや損壊した建物での生活を余儀なくされており、昨冬も乳児が寒さが原因で死亡する例が相次いだ。
イスラエルとイスラム組織ハマスは今年10月に停戦で合意。人道支援物資の搬入も合意されたが、検問所の一部閉鎖は続き、搬入は制限されたままだ。
ハマスは11日、イスラエルが仮設住宅を建設するために必要な資材の搬入を妨害していると主張。「冬が到来し、寒さに耐える避難民の苦しみを意図的に悪化させている」と非難した。
───── 以上、 朝日新聞デジタル 2025.12.12より
■ イスラエルがUNRWA施設に強制立ち入り 通信遮断し国旗を掲げる
東エルサレムの国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）の施設で2025年12月8日、イスラエルの国旗を掲げる同国の警察官ら＝AP
国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）のラザリーニ事務局長は8日、東エルサレムのUNRWA施設にイスラエル当局が強制的に立ち入ったと明らかにした。「国連施設の不可侵」の義務への違反だと非難している。
ラザリーニ氏のSNSへの投稿によると、8日朝にイスラエル当局がUNRWA施設に立ち入り、通信を遮断。家具やIT機器などを押収した。掲揚されていた国連旗がおろされ、イスラエル国旗に置き換えられたという。イスラエルでは今年1月、国内でのUNRWAの活動を禁じる法律が施行されていた。
ロイター通信によると、イスラエル当局は税金の未払いを理由に立ち入ったとしている。一方、ラザリーニ氏はイスラエルは国連施設への課税を免除する条約を結んでいると反論。今回の強制的な立ち入りは「世界中で国連が活動するあらゆる場所での危険な前例になるだろう」と警告した。
───── 以上、 朝日新聞デジタル 2025.12.9より
（島）